@ピロリ菌について さるぼぼ原稿③
ヘリコバクター・ピロリ(以下H.Pと略)は、約5300年前のアルプス氷河のミイラ(アイスマン)にも感染していた、古来より世界中に蔓延する両端に鞭毛という運動器を持つらせん状の細菌で、自然界ではヒト・サル・イヌ・ネコ・ブタなどの動物の胃内で増殖します。
衛生状態の悪い環境で、幼少期に経口感染すると考えられ、日本では60代以上の人で50%以上の高い保菌率、中学生以下では10%以下です。
胃十二指腸潰瘍の原因のほとんどがピロリ菌か、解熱鎮痛剤(NSAIDs)によるものです。H.P感染胃粘膜は内視鏡でほぼ明らかに分かる胃炎を呈し、2~3%で胃十二指腸潰瘍を発症し、H.P除菌成功により潰瘍の再発率は激減します。
H.Pは、尿・血液・生検・呼気試験・便による検査で行えます。PPI(酸分泌抑制剤)の使用などにより、コッコイドフォルムという球形の静菌状態に変化するため、生検や呼気試験によるウレアーゼ活性の検査は偽陰性となる可能性があり注意を要します。
H.Pの検査及び除菌療法は、バリウム造影検査で胃・十二指腸潰瘍と診断されるか、胃カメラで(H.P感染)胃炎と診断された人でのみ保険適応となります。胃がんの見落としを減らす目的で決められました。
除菌療法は、3種類の内服薬を一週間飲むことで行われます。
P‐CABを含む組み合わせの内服治療で、最近の一次除菌成功率は約90%と考えられています。