top of page

新型コロナウイルスウイルス感染について

新型コロナウイルス感染症流行に対するゲームチェンザーになりうるものは何かと考えた場合、私が思いつくのは、内服薬とワクチンなのですが、発想の基本にはインフルエンザウイルスの感染流行制御に関する方法があります。

 当院でもインフルエンザワクチン接種を行っていますが、インフルエンザワクチンの発症予防効果、有効率は50%程度です。

 例えば総合病院で勤務する医療従事者は大半がワクチン接種していますが、それでもインフルエンザがクラスター発生(院内感染)することがあります。有床病院で、院内でインフルエンザ感染が流行した場合、最も有効な手段は、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与;例えばオセルタミビルを7~10日間病院スタッフや病棟患者さんが内服することかと考えます。

現在世界中で主に流行している新型コロナウイルスはB.1.1.526(オミクロン株)系統の変異株で、BA.2~BA.5系統です。オミクロン株は、それまでのα、β、γ、δ株に比べ感染力が強く、急激にRNA変異数が増加した変異株で、ワクチンによる発症予防効果も低下しており、かつ時間経過により血中の中和抗体は減少するため、8週間後には3回接種した人と4回接種した人のCOVID-19発症予防効果に差は認めなかったと報告され、厚生労働省もワクチンの4回目接種は重症化予防の目的の接種としています。現在、わが国で行われている新型コロナウイルスワクチンは、ファイザー社とモデルナ社のmRNAワクチンが主で、いずれもSARS-CoV-2ウイルスの表面抗原(ウイルスが結合する人のACEレセプター受容体の結合スパイクタンパク部分)に対する免疫応答を起こすためのワクチンです。

mRNAワクチンが開発実施された当初、これまでの不活化ワクチンなどとは異なり、比較的容易に、変異株RNAに対応したmRNAの作成ができるため、次々と新たな変異株対応ワクチンが実施されるのではないかと思っていましたが、実際は後手に回ってしまっています。

 最初に述べたように、私が考えるゲームチェンジャーは、今のところ内服薬の予防投与(内服)なのですが、塩野義が開発した内服薬ゾコーバは厚生労働省の薬事分科会で「有効性を推定できるデータがそろっていない。」とされ、また緊急承認が見送られました。オミクロン系統株では重症化率が低く、臨床症状も比較的短期間に改善する人も多いため、症状に対する有効性で判断すれば、NSAIDsの方が勝るであろうことは容易に想像されます。ゾコーバの作用機序は、ウイルス表面のスパイクがACEレセプター受容体と結合した後の、細胞内侵入を阻害する蛋白分解酵素阻害剤で、これまでのところオミクロン系統の変異には影響されないようです。オミクロン系統株の問題は感染力が強いことで、現在の問題は感染者が増え続けていることです。即ち感染を防ぐものがゲームチェンジャーになり得ます。「ゾコーバ」に必要なことは、感染(発症)予防をアウトカムにした予防内服の治験を行うことだと考えます。抗インフルエンザ薬は予防投与が認められている薬ですが、新型コロナウイルス感染症という歴史的な出来事に対して、「薬は治療薬でワクチンが予防薬」という既成概念は持つべきではないと考えます。政府は既に「ゾコーバ」を事前購入しています。予防内服の治験で有効性が認められなければ、それは立派な科学的成果です。もし50~70%以上の予防効果が立証されれば、世界を席巻するゲームチェンジャーになり得ます。私のように外交戦略まで妄想してしまう者は少ないのでしょうか?

 ワクチンにはゲームチェンジャーの期待はできないように思われます。私はワクチン反対論者ではないので、東京オリンピック後のデルタ株感染流行が著減したのは、20代~50代の人が一気にワクチン接種をしたからだろうと思っていますし、希望される方には自院でもワクチン接種を行っています。しかし、今後の変異株の感染流行を阻止する力はないのでは、と思っています。     2022.7/30 しもじクリニック 下地圭一

しもじクリニック 感染予防対策の取組み

1.「正しく恐れる」

 デマや憶測でいたずらに怖がることは、強迫観念や被害妄想などを生み、偏見や差別につながる可能性があります。従って、出典の明らかな正しい情報をアップデートすることが重要です。検査数が十分ではない日本の現状では感染状況を正確に把握することは困難で、院内感染が多発していることから、医療従事者は症状のない無自覚な新型コロナウイルス感染者と、院外・院内で無防備な状態で接触することにより感染している(院内感染が起きた病院で、検査された陽性医療従事者の約半数近くが無症状)という報告もあります。東京などの感染経路が不明な新型コロナウイルス感染が多数を占める地域においては、無症状・無自覚な新型コロナウイルス感染者が、少なからず存在していると想像されますが、無作為抽出されたある程度多数の人数を検査しない限り状況の把握はできず想像の域を超えません。そのため人との接触を8割減らすという施策がとられています。人から感染しないだけでなく、自分が人に移さないという意識が必要となります。  

 当院でもスタッフミーティングを重ねるとともに、地域の病院とも連携し感染予防に努めさせていただきます。

 

2. 当クリニックの感染予防対策

A. 発熱、感染症疑い症状がある方には、事前に電話で問い合わせていただき、月火木金の11時30分~12時と17時30分~18時、土曜日11時30分~12時に、駐車場ドライブスルー方式で新型コロナウイルス抗原検査を行わせていただきます。

(1)従業員の感染予防;出勤時の体温測定、症状の有無の確認、常時マスク着用、手指消毒

 別紙*(発熱・風邪症状のある(あった)方と、ない方の区分け;C0~C3)によって来院された患者さんを区分させていただき、症状のある(あった)方の診察は各診察室で感染防御個人防護具PPE(マスク(N95)orサージカルマスク、フェイスガード、レインコート(またはガウン)、手袋など)を適宜装着して診察に当たらせていただきます。

(2)来院された患者様へのお願い

 ①37.3℃以上の発熱、咳、倦怠感・嗅覚味覚異常・呼吸困難などのいずれかの症状がある方、および市外在住又は市外から帰省された方は、来院前に電話で相談していただき、玄関でインターホンを押してスタッフを呼び出しその場でお待ちください。PPEを装着したスタッフが問診など対応させていただきます。

 ②全ての来院者には、玄関から入られたらアルコールで手指消毒をしていただき、症状の有無に関わらずサージカルマスクを装着していただきます。スタッフの誘導に従い各待合室・診察室にマスクを着けたままお入りください。状態により区分してご案内させていただきます。

  アルコール消毒による皮疹などアレルギーのある方は来院時にスタッフにお伝えください。

 ③診察後、検査結果待ち、会計待ちなどの待ち時間も案内された場所でお待ちいただき、帰られる際にもアルコールなどによる手指消毒をお願いいたします。

 ④当クリニックの構造上、患者様の導線を完全に分けることはできません。パーテーションで区切り飛沫感染を防ぎ、こまめに椅子・床など院内の消毒・清掃を行っています。換気や空気清浄機の稼働も行っています。

1. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンについて

 ビオンテック/ファイザー社のコミナティーとモデルナ/武田のワクチンはmRNAワクチンですが、これらは新型コロナウイルスの流行により開発され認可された初めてのタイプのワクチンで、いずれも2回の接種の後約2週間で約95%の発症予防効果とそれ以上の重症化予防効果があったと報告されています。簡略に言えば、これらはウイルスの骨格表面で人の細胞に接着・侵入する部位となるACE2レセプターと結合する表面蛋白の一部の鋳型であるmRNAを、一部に修飾を加えPEG(ポリエチレングリコール)などの脂質粒子に封入して注射することで不安定なmRNAを失活させずにヒト細胞に取り込ませ、ヒト細胞内のリボゾームでそのmRNA読み取らせてアミノ酸(ウイルス表面蛋白)をヒト細胞に複製製造させて、ヒトにとって異物であるウイルス表面蛋白に対する免疫応答(細胞性免疫や液性免疫)を起こさせ、ウイルスの細胞接着・侵入を阻止するものです。取り込まれたmRNAは細胞質内で読み取られ、核内DNAに取り込まれることはないと考えられています。

 

2.  新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの副作用・副反応(ファイザー社コミナティー)

 1)接種部位の疼痛;軽い痛みも含めると約90%で生じることが報告され、ほとんどが1-2日目に軽快し、4日目以降も痛みが続く人は稀です。

 2)37.5℃以上の発熱;1回目の接種後の発熱は全体で約3%、2回目では約27~35%と報告されています。アセトアミノフェンやイブプロフェン・ロキソプロフェンなどの解熱鎮痛剤を原則使用できます。

 3)倦怠感;1回目の接種後に約20%、2回目では約55(15~67)%

 4)頭痛;1回目の接種後に約13%、2回目では約53(17~65)%;解熱鎮痛剤有効

 6)その他;下痢、嘔気・嘔吐、鼻汁、関節痛、リンパ節腫脹などの副反応が数%の頻度で報告されていますが3日以内に軽快する人がほとんどです。

 7)アナフィラキシー

   アナフィラキシーとは、急激な全身性のアレルギー反応により、血圧低下・意識障害・呼吸障害などを来し死に至ることも有り得る病態です。SARS-CoV-2ワクチンの副反応(ファイザー社)ではアナフィラキシーショックが起こる頻度は100万回に4.5回程度と言われています。

8)心筋炎・心膜炎

  ファイザー製ワクチンでは100万回に0.6件、モデルナ製ワクチンで100万回に1.6件の報告があります。

3. mRNAワクチンについて

  mRNAを脂質膜に封入して生体に注入することで、動物の細胞に目的とする蛋白を作らせることができるという技術は衝撃的でした。mRNAの大きさや修飾技術、副作用を起こしにくい最適な濃度など難しさはあるにせよ、またおそらく、注入されたmRNAが、さほど長期に蛋白合成をつづけさせることはできなさそうではありますが、微生物の表面蛋白とそれをコードするRNAはほぼ解明されているまたは解析できるので、今後はmRNAワクチンが主流になるだけでなく、癌特異的蛋白、あらゆる生体内の酵素や生体信号を司る蛋白レセプター、などなど今後mRNAを使用する製薬技術が、短期的な治療薬として開発競争が加速するように思います。

4. インフルエンザワクチンについて

 インフルエンザワクチンはウイルスを鶏卵(有精卵)で培養増殖したものを抽出して不活化させて筋注(または皮下注)する方法でmRNAワクチンとは異なります。インフルエンザワクチンの発症予防効果は33~65%と言われ、ほぼ5割以下と考えられます。

 インフルエンザ感染症に対してはタミフルタミフル(内服オセルタミビル)やイナビル(吸入ラニナミビル)などの有効な抗ウイルス薬があり、同居する家族が感染発症したら予防薬としても使用可能です。発症2日目以内の投与が推奨されるのは、インフルエンザに感染発症しても大半は7日以内に自然治癒するため、3日目以降に使用しても自然経過と大差がないと考えられるためです。

 昨年度夏南半球ではインフルエンザの流行がなく、日本でも流行しませんでした。新型コロナに対して、世界中で厳しい渡航制限がされたことと、感染予防のためにマスクを着用し手洗いや消毒を励行し、蜜を避けるなど感染予防に努めた結果、新型コロナの流行は各地で起こりましたが、インフルエンザは流行せず2021年度も夏に南半球での流行はなく、個人的には2022年度も日本ではインフルエンザの流行はないと予想しています。ワクチン学会や感染症学会では昨年度流行がなかったため、万一感染が起きたら大流行になる可能性が否定できずインフルエンザワクチン接種を勧めていますが、私には、万が一のリスク回避の方便で科学的な推論とは言えないように思えてしまいます。と、ここまでは2021年の9月末に記載したのですが、2022年夏即ち南半球の冬には、インフルエンザA香港型を主体とする流行が認められました。前記したように新型コロナウイルス流行を阻止するツールが現状ないため、2022-2023年の冬季にインフルエンザと新型コロナが同時に流行する可能性があります。但し、先に記したようにインフルエンザには有効な内服薬と吸入治療薬、点滴の治療薬があります。

bottom of page