新型コロナウイルスウイルス感染について

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の世界的な感染の広がりが連日報道されており、心配されてみえる方が多いと思います。

  医者ということで尋ねられることも多いので、報道やネットから得られる知識以上に詳しいわけではありませんが、少しまとめてみたいと思います。

​ ウイルスは遺伝子を持った最小の微生物ですが、細菌などとは異なり、単体で栄養をとったり増殖することはできず、他の生物の細胞内に寄生して細胞内の宿主の酵素などに自らの遺伝子や構造蛋白などを作らせて増殖する生物(?)です。細菌に寄生するバクテリオファージというウイルスもいます。コロナウイルスは元々、風邪を引き起こす原因の10〜15%(流行期の約35%)を占める1本鎖RNAウイルスでその大きさは80~220nm (100nmは1mmの1万分の1)です。新型コロナウイルスは2019年にコロナウイルスが変異したウイルスとして発見され急速に世界中に感染拡大したもので、発症1~2週間後に呼吸不全を伴う重症化をきたすケースがあります。

 N95マスクは0.1~0.3μm(300nm)の粒子を95%以上捕集できるマスクで、SARS(コロナウイルスの1種)流行期に予防効果があったとされていますが、外した時には跡が付くほど強いゴムで密着させるため、かなり息苦しい感じがします。一般的なものはサージカルマスクと呼ばれ、基本的には咳やくしゃみ・会話などの際に、唾液などの微生物を含む分泌物の飛沫を抑える目的のマスクで、外から分泌滴が付着した場合にすぐに交換すればある程度その侵入を防げますが、長時間の装着では予防効果はあまり期待できないと考えられます。つまりサージカルマスクの主目的は症状のある人や外科医などが装着し、微生物の飛沫・拡散を最小限に抑えることです。

 岐阜県は2020.2/26に1人目大垣の50台男性の感染があり、重症化して人工呼吸器管理されましたが、回復し退院されてみえます。30例目は3/29、50例目は7日後の4/5、100例目は6日後の4/11、4/23には149名の感染(陽性者)報告がありました。

 県内COVID19陽性者は6月半ばまで155名(6/18)でした。7/15県岐商40代男性教諭の感染報告あり、岐阜市20代男性会社員(熱海市の「カラオケ飲食店クレッセント」利用)、可児市の男性会社員(県外会社勤務)の感染報告あり、関東をはじめとする第2波の全国的な広がりに伴い、7月中旬から県内感染者も急増し、中部学院大学のクラスター発生もあり、7/24には216名の感染報告がありました。その後も感染者は急増し7/28には1日最高の25人の感染報告があり、緊急事態宣言解除後感染115人、県内感染は265名(7/28)、入院患者数も91人(7/28)と急増し7/29には岐阜市の9名、海津市のクラスター7名など30名の感染報告があり、県内感染は295名(7/29)、8/31には名古屋市内飲食関連、美濃加茂市格闘技関連、可児市スポーツジム関連の新たなクラスター報告あり、9/11に土岐市40代女性の家族と職場の20代女性(可児市)の計5人の感染報告があり、9/13には可児市・多治見市で12人のクラスター(計24人)発生あり、10/23にはナイトクラブ関連クラスターと食事関連クラスターなどがあり県内感染は668名(10/23)でした。11月27日には高山市でも50代男性JR会社員(感染経路不明)の感染が確認され、12月22日には13例目の報告があります。12月8日には新たな40人の県内感染、累計1299名(12/8)が発表され、12月24日の県内感染は56名累計1895名、県内死亡は27名(12/24)、その後も連日50人以上の新規感染報告あり、2021年1月5日には98人、累計2591名、県内死亡は41名(1/5)となりました。1月14日には高山西高校で前日も含め男女合わせて14人の生徒と30代男女職員2人のクラスター発生が報告され、県内の感染者は木沢記念病院の225名(2/25)に及ぶ県内最大のクラスター発生もあり、累計4606名(2/25)、県内死亡は108名(2/25)となりました。

 県内感染者情報については;岐阜県公式ホームページ⇒緊急・重要情報⇒新型コロナウイルス感染症→県内の感染動向に詳しく掲載され日々更新されています。

 今後も注意を怠らず、咳エチケット・手指消毒・うがい、「密閉・密集・密接」が重なる場を避ける・人との距離を1.8m以上開けて飛沫感染を防ぐなど感染予防対策が必要です。

 発熱、強い全身倦怠感の持続・咳・味覚嗅覚異常・頭痛・関節痛・呼吸困難などの症状がある方で、新型コロナウイルス感染が疑われる人との濃密な接触(近距離での会話や、近距離で咳・くしゃみをされたなど)の機会があった方など、感染を心配される場合には、受診・相談センターに電話相談していただくこととなります。通常の発熱・かぜ症状などではかかりつけ医に電話で御相談ください。

 受診・相談センター;飛騨保健所Tel;0577-33-1111(内線309, 310)、厚生労働省Tel:0120-565653。相談窓口で必要があると判断されれば、指示に従い指定病院の帰国者・接触者外来を受診していただくことになり、そこで医師の診察により必要と判断されれば新型コロナウイルスのPCR検査(行政検査)などを受けることができます。

 COVID19(新型コロナウイルス感染症)の症状は発熱、全身倦怠感、咳嗽、呼吸困難、息切れ、嗅覚味覚異常、頭痛などで、まれに下痢・嘔気があります。鼻水・咳・咽頭痛・頭痛などの上気道感染(風邪)症状は風邪との識別困難です。潜伏期はおよそ3日~9日で、約20%で入院加療を要し、致死率は2~5%と考えられています。

 消毒せず放置した場合、飛沫落下ウイルスは約3日感染能力ありとの報告があります。

 症状のない不顕性感染者や発症2日前の潜伏期での濃厚接触でも感染し得ると考えられています。

しもじクリニック 感染予防対策の取組み

1.「正しく恐れる」

 デマや憶測でいたずらに怖がることは、強迫観念や被害妄想などを生み、偏見や差別につながる可能性があります。従って、出典の明らかな正しい情報をアップデートすることが重要です。検査数が十分ではない日本の現状では感染状況を正確に把握することは困難で、院内感染が多発していることから、医療従事者は症状のない無自覚な新型コロナウイルス感染者と、院外・院内で無防備な状態で接触することにより感染している(院内感染が起きた病院で、検査された陽性医療従事者の約半数近くが無症状)という報告もあります。東京などの感染経路が不明な新型コロナウイルス感染が多数を占める地域においては、無症状・無自覚な新型コロナウイルス感染者が、少なからず存在していると想像されますが、無作為抽出されたある程度多数の人数を検査しない限り状況の把握はできず想像の域を超えません。そのため人との接触を8割減らすという施策がとられています。人から感染しないだけでなく、自分が人に移さないという意識が必要となります。  

 飛騨地方でも新型コロナウイルス感染陽性者が確認されました。高山市の感染累計は32名(1/14)から340名(9/26)に増えました。

 岐阜県も全国的な感染増加に伴い医療体制の逼迫をきたしてきており、病院や高齢者施設での感染も認めるようになってきました。

 当院でもスタッフミーティングを重ねるとともに、地域の病院とも連携し感染予防に努めさせていただきます。

 

2. 当クリニックの感染予防対策

(1)従業員の感染予防;出勤時の体温測定、症状の有無の確認、常時マスク着用、手指消毒

 別紙*(発熱・風邪症状のある(あった)方と、ない方の区分け;C0~C3)によって来院された患者さんを区分させていただき、症状のある(あった)方の診察は各診察室で感染防御個人防護具PPE(マスク(N95)orサージカルマスク、フェイスガード、レインコート(またはガウン)、手袋など)を適宜装着して診察に当たらせていただきます。

(2)来院された患者様へのお願い

 ①37.3℃以上の発熱、咳、倦怠感・嗅覚味覚異常・呼吸困難などのいずれかの症状がある方、および市外在住又は市外から帰省された方は、来院前に電話で相談していただき、玄関でインターホンを押してスタッフを呼び出しその場でお待ちください。PPEを装着したスタッフが問診など対応させていただきます。

 ②全ての来院者には、玄関から入られたらアルコールで手指消毒をしていただき、症状の有無に関わらずサージカルマスクを装着していただきます。スタッフの誘導に従い各待合室・診察室にマスクを着けたままお入りください。状態により区分してご案内させていただきます。

  アルコール消毒による皮疹などアレルギーのある方は来院時にスタッフにお伝えください。

 ③診察後、検査結果待ち、会計待ちなどの待ち時間も案内された場所でお待ちいただき、帰られる際にもアルコールなどによる手指消毒をお願いいたします。

 ④当クリニックの構造上、患者様の導線を完全に分けることはできません。パーテーションで区切り飛沫感染を防ぎ、こまめに椅子・床など院内の消毒・清掃を行っています。換気や空気清浄機の稼働も行っています。

1. 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンについて

 ビオンテック/ファイザー社のコミナティーとモデルナ/武田のワクチンはmRNAワクチンですが、これらは新型コロナウイルスの流行により開発され認可された初めてのタイプのワクチンで、いずれも2回の接種の後約2週間で約95%の発症予防効果とそれ以上の重症化予防効果があったと報告されています。簡略に言えば、これらはウイルスの骨格表面で人の細胞に接着・侵入する部位となるACE2レセプターと結合する表面蛋白の一部の鋳型であるmRNAを、一部に修飾を加えPEG(ポリエチレングリコール)などの脂質粒子に封入して注射することで不安定なmRNAを失活させずにヒト細胞に取り込ませ、ヒト細胞内のリボゾームでそのmRNA読み取らせてアミノ酸(ウイルス表面蛋白)をヒト細胞に複製製造させて、ヒトにとって異物であるウイルス表面蛋白に対する免疫応答(細胞性免疫や液性免疫)を起こさせ、ウイルスの細胞接着・侵入を阻止するものです。取り込まれたmRNAは細胞質内で読み取られ、核内DNAに取り込まれることはないと考えられています。

 現在世界中で流行の主流となっているインド株(ウイルスRNAのデルタ変異)はイギリス株(アルファ変異)の約1.5~2倍の感染力があり、ファイザー社ワクチン接種後6か月後でも約90%の感染予防効果があると言われていましたが、ウイルス表面蛋白に対する抗体価は3カ月で3/4、6カ月で86%低下すると報告され、イスラエルでは、δ変異ウイルスに対する感染予防効果は64%まで低下したといつ報告があり3回目のブースターワクチン接種が始まっていますが、日本では3回目のワクチン接種はまだ認可されていません。

 抗体(液性免疫)が低下しても、細胞性免疫やメモリーT-cellが働くため感染後の重症化は抑制できると考えられ、人工呼吸器を装着するような重症呼吸不全を来した人のほとんどはワクチン接種を行っていない方のようです。しかし、δ変異ウイルスは感染初期に鼻粘膜などで増殖するようで、そこでは免疫が十分に働く前にウイルスが増殖し人に感染する能力を持ち得るようです。

2.  新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの副作用・副反応(ファイザー社コミナティー)

 1)接種部位の疼痛;軽い痛みも含めると約90%で生じることが報告され、ほとんどが1-2日目に軽快し、4日目以降も痛みが続く人は稀です。

 2)37.5℃以上の発熱;1回目の接種後の発熱は全体で約3%、2回目では約27~35%と報告されています。アセトアミノフェンやイブプロフェン・ロキソプロフェンなどの解熱鎮痛剤を原則使用できます。

 3)倦怠感;1回目の接種後に約20%、2回目では約55(15~67)%

 4)頭痛;1回目の接種後に約13%、2回目では約53(17~65)%;解熱鎮痛剤有効

 6)その他;下痢、嘔気・嘔吐、鼻汁、関節痛、リンパ節腫脹などの副反応が数%の頻度で報告されていますが3日以内に軽快する人がほとんどです。

 7)アナフィラキシー

   アナフィラキシーとは、急激な全身性のアレルギー反応により、血圧低下・意識障害・呼吸障害などを来し死に至ることも有り得る病態です。SARS-CoV-2ワクチンの副反応(ファイザー社)ではアナフィラキシーショックが起こる頻度は100万回に4.5回程度と言われています。

8)心筋炎・心膜炎

  ファイザー製ワクチンでは100万回に0.6件、モデルナ製ワクチンで100万回に1.6件の報告があります。

3. mRNAワクチンについて

  mRNAを脂質膜に封入して生体に注入することで、動物の細胞に目的とする蛋白を作らせることができるという技術は衝撃的でした。mRNAの大きさや修飾技術、副作用を起こしにくい最適な濃度など難しさはあるにせよ、またおそらく、注入されたmRNAが、さほど長期に蛋白合成をつづけさせることはできなさそうではありますが、微生物の表面蛋白とそれをコードするRNAはほぼ解明されているまたは解析できるので、今後はmRNAワクチンが主流になるだけでなく、癌特異的蛋白、あらゆる生体内の酵素や生体信号を司る蛋白レセプター、などなど今後mRNAを使用する製薬技術が、短期的な治療薬として開発競争が加速するように思います。

4. インフルエンザワクチンについて

 インフルエンザワクチンはウイルスを鶏卵(有精卵)で培養増殖したものを抽出して不活化させて筋注(または皮下注)する方法でmRNAワクチンとは異なります。インフルエンザワクチンの発症予防効果は33~65%と言われ、ほぼ5割以下と考えられます。

 インフルエンザ感染症に対してタミフル(内服オセルタミビル)やイナビル(吸入ラニナミビル)などの有効な抗ウイルス薬があり、同居する家族が感染発症したら予防薬としても使用可能です。発症2日目以内の投与が推奨されるのは、インフルエンザに感染発症しても大半は7日以内に自然治癒するため、3日目以降に使用しても自然経過と大差がないと考えられるためです。

 昨年度夏南半球ではインフルエンザの流行がなく、日本でも流行しませんでした。新型コロナに対して、世界中で厳しい渡航制限がされたことと、感染予防のためにマスクを着用し手洗いや消毒を励行し、蜜を避けるなど感染予防に努めた結果、新型コロナの流行は各地で起こりましたが、インフルエンザは流行せず、今年度も夏に南半球での流行はなく、個人的には今年も日本ではインフルエンザの流行はないと予想しています。ワクチン学会では昨年度流行がなかったため万一感染が起きたら大流行になる可能性が否定できずインフルエンザワクチン接種を勧めていますが、いったいどこから流入して大流行になると考えられるのでしょう。私には、万が一のリスク回避の方便で科学的な根拠に乏しいと思えてしまいます。